1993年、日本で初めてユネスコの世界遺産が登録されて、4カ所ありました。そのうちの一つが、青森県と秋田県にまたがる「白神山地」です。広大なブナの森です。実は、当時の私には、その価値は、あまりピンときていませんでした。
私はフリーランスの写真家として独立したばかりでした。撮影の対象は、主に観光地や人が集まる場所。そんな私にとって、「ただ緑が広がる森」が評価された理由を理解できなかったのです。なんでもないブナ、なんでもない森、なんでもない自然。しかし、その後、全国各地の自然に触れるなかで、ブナの木が持つ力を知るようになっていきます。ブナの森は、多くの生き物たちが暮らしていて、豊かな水を生み出し、人たちに安らぎを与えてくれる場所です。大事にしなきゃいけない。白神山地が世界遺産として認められた理由がわかりました。白神山地の素晴らしい自然が、これからも守られ続けることを願っています。
数日前、新潟県魚沼市大白川のブナ林を訪れました。
ブナを観察すると幹には美しい模様があります。これは空気が澄んだ環境で見られる特徴の一つです。不思議です。初めて見た時には、自然の神秘に驚き、感動しました。こんなことを教えてくれる自然は素晴らしい。
30年前には知らなかった自然が持っている力や、その大切さを、今ではわかるようになっています。それと同時に、風景の見え方も少しずつ変わってきています。
今月に、奈良県の「飛鳥・藤原の宮都」が世界遺産に登録されました。関係者の皆さま、おめでとうございます。昔の私のように意味が理解できない方がいるかもしれません。ただの遺跡としてではなく、古代の人たちへの思いが訪れた人たちに伝わるきっかけになるといいですね。
事務局 佐藤尚









